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「野田鶴声社」その笛の音はスタジアムから世界へ。

2002年のW杯で活躍した日本の中小企業は、競技用ボールのモルテンだけではない。審判員が吹く笛の多くは、東京の野田鶴声社が手掛けたものだ。住宅街にひっそりとたたずむ同社は、従業員わずか5人の零細企業。しかし、同社が作る笛はあらゆる面で世界トップクラスの品質を誇っており、W杯以前にも世界中のサッカーの試合で使われていた。今でこそ「世界のノダ」と呼ばれる同社も、70年代半ばまでは一玩具会社にすぎなかった。

徹夜で仕上げた笛1,000個が大評判に

1968年、野田鶴声社に転機が訪れる。アメリカのバイヤーの注文に応え、真鍮でできた笛の見本1,000個をたった一晩で作り上げたのだ。その見本を受け取ったバイヤー自体は事業に失敗したものの、野田鶴声社の偉業は評判となり、他のバイヤーや商社から相次いで注文を受けることとなった。それを足掛かりに、同社はヨーロッパへと市場を拡大していった。